「基督教長老教会(キリスト教プロテスタント長老派)」の台湾における歷史は、1865年の英国人ジェームズ・マックスウェル医師の台湾南部への上陸、1872年のカナダ長老派教会ジョージ・マッケイ博士の台湾北部への上陸に遡ります。二人は共に医療行為と宣教を行いました。台湾の政治が混乱し経済的に困窮していた頃、教会は地元住民に医療、教育、精神的な支えを提供したため、教会は少なくない地域で信仰の中心となりました。
台湾基督教長老教会は1950年宜湾集落に宣教に入り、朱蘭妹などが他の教派から次々に宗旨替えを行いました。当時は陳志豊宣教師、林川明牧師が宣教を担っていました。後に信者が多くなり、家庭で行なっていた集会に参加者を収容しきれなくなったため、信者たちは自ら資金と力を出し合い、礼拝堂の建設を行うことを決議。こうして1953年、コンクリートタイルの屋根を持つ礼拝堂が完成したのです。
その後1974年の台風で教会の本体建築が損壊。新しい教会の建設が計画されました。現在の建物は賴明徳の設計です。煉瓦造りの平屋建てで、正面は欧州の田舎の小さな教会の様式で建てられています。純白の外壁がベースとなり、屋根はゴシック建築の風格を備え、屋根の先端と入り口両側には十字架と天使の彫刻が設えられています。当時教会の外観について検討を進めていた際、賴明徳は、幼い頃自身が集めていた小さなカードを取り出し、カードに載っていた建物の様式で設計図を描いたと言われ、そのため「カード教会」との名がついたのです。東海岸沿線でも極めて特色ある教会の一つで、2003年に台東県政府により「歷史建築」に指定されています。
カード教会の知名度が上がると共に、今では多くの人が成功鎮北端の宜湾集落を訪れるようになっています。ここでロケを行う台湾人監督も現れる中、2012年8月、成功鎮に暮らす音楽家、蘆葦が「カード教会の鐘の音」をタイトルとしてアルバムをリリースしました。アルバムのジャケットは、国際的に著名なデザイナー、蕭青陽が手がけ、教会の外観を参考にしたデザインは、その年の「最優秀アルバム・パッケージ賞」設計賞を受賞しています。こうしてカード教会にアートとロマンの香りが添えられました。